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Contribution, Web Meeting

オンライン講座で気をつけたいこと:講師編

2020.6.3

北原教授の「オンライン講義で気をつけたいこと」第2回。今回は、講師側が気を付けなければならない事柄についてお教えいただきたきます。

―今回は講師側ですがどのようなことがありますでしょうか。

北原教授:講師として気を付けたいことは次の10項目です。

(1)受講者、学生のネットワーク環境を確認する
(2)ビデオチャットとテキストチャットのそれぞれの特性を知っておく
(3)双方向のやり取りを促す工夫をする
(4)実際の講義よりもゆっくりペースで
(5)自宅からのオンライン講義ではテンションを上げる
(6)受講者の名前を呼び語りかける
(7)ときどきジョークを入れる
(8)講師は顔を見せるよりも資料を見せる
(9)留学生が多い場合はテキストチャットを活用する
(10)ビデオチャット講義では周囲のスピーカをオフにしておく

―「(1)受講者、学生のネットワーク環境を確認する」について教えてください。

北原教授:本当に基本のことなのですが、受講者(学生)のネットワーク環境を確認することが必要です。学生のネットワーク環境は案外プアな場合が多く、パケット容量に上限を設定している場合もあります。
一人でもネットワーク環境に問題がある場合、教育機会均等の観点から、オンライン講座自体の実施が難しくなってしまいます。その場合、テキストチャットの利用などに切り替えることも考えます。

―「(2)ビデオチャット利用講義とテキストチャット利用講義のそれぞれの特性を知っておく」ということについては。

北原教授:双方向のオンライン講義には、ビデオチャット利用講義とテキストチャット利用講義があります。
前者のビデオチャット講義では、顔が見え声が聞こえるため誰が受講していてどんな反応を示しているかがわかります。ただ発言が出にくい、発言のタイミングが難しいなどの特性があります。
テキストチャット講義は、誰が受講しているのかがわかりにくいことが難点です。さらに、文字入力が遅いとタイミングが合わない、受講者からの質問が重なるとリプライが追いつかない、というデメリットもあります。一方で気軽に発言しやすい、記録が残るので読み返すことができるというメリットがあります。

―それぞれ良いところ、悪いところがあるのですね。「(3)双方向のやり取りを促す工夫をする 」についてはどうでしょうか。

北原教授:大学のビデオ講義は、仕事で使っているWeb会議とは基本的に異なります。
仕事では双方発言しないと成立しませんが、講義では受講者側がほとんど話さないことも多い。そのため講師側は質問を増やすなど、双方向のやり取りを促す工夫をしなければいけません。

―テキストチャットは、学生の皆さんも使い慣れていますしね。次に「(4)実際の講義よりもゆっくりペースで」ということなのですが。

北原教授:オンライン講義では、受講者の反応がわかりにくいため、教える側のペースがつい速くなりがちになります。ですから意識的にゆっくりペースで進めることが大切です。

―それは確かにありますね。「(5)自宅からのオンライン講義ではテンションを上げる」ということなのですが

北原教授:自宅からのオンライン講義では、人を前に話す実際の教室での講義と違いトーンが落ちがちになってしまいます。そのため話す際には意識的に声のテンションを上げる必要があると思います。

―「(6)ときどき受講者の名前を呼び語りかける」とはどんなことでしょう。

北原教授:何度かお話していますが、オンライン講義の受講者は当事者感覚がなくなりがちです。参加意識を持たせるためにも、ときどき受講者の名前を呼びかけるようなことも必要です。

―相手が自分のことを見ているという意識を持たせることは必要ですね。次に「(7)ときどきジョークを入れる」というちょっと意外な項目も挙げられています。

北原教授:オンライン講義は、双方が普通の講義以上に気持が張り詰める上に単調になりがちです。そのためときどきジョークを入れるなどのアイスブレークも必要です。

―大学の先生って大変なんですね。先生もネタ帳を持たれたりしているのですか?

北原教授:ふふふふ。どうでしょう。

―「(8)講師は顔を見せるよりも資料を見せることに重きを」ですが、これはすごくわかる気がしますね。

北原教授:はい。講師の顔は、最初と最後に少しだけ見せれば十分です。ビデオ講義で分かりやすく内容を伝えるためには資料やホワイトボードを見せることが重要です。

―これは仕事の会議でも共通することかもしれませんね。「(9)留学生が多い場合はテキストチャットを活用する」はどうでしょうか

北原教授:一般に多国語は音声で聞くよりも、文字を読むほうが理解しやすいものです。受講者に留学生が多い場合はテキストチャットを利用するほうが理解が深まります。

―最後に「(10)ビデオチャット講義では周囲のスピーカをオフにしておく」ですが。

北原教授:ビデオチャット講義では、ハウリングを起こしてキーンという音が講義の進行を邪魔をする場合があります。それを防ぐためには、周囲のスピーカや他のPCのスピーカもオフにしておくようにしましょう。
Web会議で気をつけたいこと」にも書かれていた「服装に気を使う」「背景に気をつかう」「周りの音にも配慮を」という3点はオンライン講座でも同じように気をつけたいことです。

オンライン講義の活用は、新型コロナの問題をきっかけに今後さらに増えてくるようにも思います。発信者側としてこうしたノウハウは、ぜひ身に付けておきたいですね。
北原先生、ありがとうございました。

interviewee

北原 義典
東京農工大学大学院工学府産業技術専攻 教授
人間行動科学に基づく組織マネジメントの教育と研究に従事。前職は㈱日立製作所中央研究所主管研究員。
2014年4月から現職。