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【寄稿】コロナ禍の初詣②「神社を観察する」

2020.12.28

新しい初詣のご提案、その2です。
「近所の神社を巡る」際に少しだけ気にしていただきたいポイントのご紹介です。神社によって鈴のありなし、鳥居の形、屋根の作りなどに違いがあります。見比べつつお参りするのも楽しいですよ。
今回も神社ウォッチングの会会長の外山晴彦さんのご寄稿です。

神社と鈴

拝殿の賽銭箱の上方に鈴が下がっているのは、現代では当たり前の風景だ。鈴は「涼やかな音で邪を祓い、神を呼ぶ」とされる。

神社に鈴を下げるようになったのは江戸後期からと思われる。
その後急速に普及した理由のひとつは明治時代の「神仏分離政策」だ。それまでは神仏習合で仏具である「鰐口(わにくち)」が置かれた神社が多かったが、これを撤去して代わりに「鈴」を下げたのだ。戦後には、さらに多くなった。

鈴(左)と鰐口(右)

巫女鈴(タイトル上の写真参照)も古いものではなく、その普及は明治以後だ。出雲大社や埼玉・氷川神社などには、現在も拝殿に鈴はない。

神社のシンボル「鳥居」

鳥居は、神社の象徴的存在だ。四本余の材を組み合わせただけの単純な建造物で、参道を示す一種の門といえる。
鳥居の形や大きさ、彩色、材質を考え合わせると、同じものはない。その形を分類すると十数種から数十種となる。それでも細部で適合しない形もあって、正確な分類は成り立たない。普段見過ごしている鳥居を、改めて観察してみれば、その多様な姿に驚くだろう。

多様な「鳥居」

本格的な鳥居は、接合部分に釘を使わず、巧みな木組みがなされる。柱も垂直ではなくやや傾いて建てられるものが多い。

鳥居の彩色には漆が使われた。現代では化学塗料も多用される。いずれにしても、塗装前に柱に布を巻くのが基本だ。お椀の漆塗りに使われる「布着せ(ぬのきせ)」と同じ手法で、下地を補強して仕上がりの美しさと強度を保つ。とくに柱のひび割れを覆うためには重要だ。古い彩色鳥居にその痕跡を探してみよう。

鳥居は寺院にも見られることがある。一方、絶対的に神社でしか見られないのが「千木(ちぎ)」と「堅魚木(かつおぎ)」だ。「千木」とは屋根の両端に交差して立ち上がる木材。「堅魚木」は屋根の棟に水平にいくつか置かれる丸太材。古代建築の名残で、前者は破風(屋根の側面についている板)の延長、後者は葺きの押さえといわれるが、その実態はよく分からない。

千木と堅魚木

千木の先端を垂直に切った形のものを「外削ぎ(そとそぎ)」、水平に切った形を「内削ぎ(うちそぎ)」という。外削ぎは男神、内削ぎは女神を祀っていることを示す、などと真顔でいう人がいるが何の根拠もない。同様に堅魚木の数が奇数なら男神、偶数なら女神という俗信もある。資料上でも実地検証でも、そのような事実は認められない。


お正月は密を避けて、近隣の神社散策をしてみてはいかがでしょうか。
みなさま、良いお年を。

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石仏・神社ウォッチングのすすめ
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