
漁業の今と未来
社会が大きく変化している今、漁業も例外ではないようです。様々な問題を抱える漁業の今とこれからについて、漁業と魚の調理に詳しい四分一さんにお話を伺いました。
儲かる漁業へ
漁業を取り巻く環境は、今とても厳しいという。地球環境の変化や乱獲による漁獲量の減少と、深刻な高齢化が進んでいる。「正直、漁業はあんまり儲からないんです」。
ジャポニカウナギや太平洋黒マグロが絶滅危惧種に指定されたことはニュース等でもたびたび取り上げられてきた。乱獲も同様だ。
高齢化もかなり深刻で、新規参入がしづらいことから悪循環になっているという。
新たに漁業をはじめるには漁協への加入が必須で、気軽にははじめられない。漁協への加入費や船などの装置の購入費、燃料代など出費も多く資金的な壁もある。「農業なら土地さえ用意できれば農家っぽいことから始められますが、漁業はそうはいかないんです」。
そんな中、新しい販売方法で「儲かる漁業」を目指す漁師も増えつつあるという。「直接消費者に魚を届ける」漁師だ。漁に出て釣り上げた魚を、その場でSNSにアップし販売している。新鮮な魚を手に入れられると消費者の評判もとてもよく「最近では漁に出る前に売り切れる」そうだ。漁師にとっても消費者の声が聞け、市場の価格に左右されないなどプラスが大きい。
持続可能な漁業を
漁業を守るためには「漁獲量の制限だけでなく、漁獲方法の制限も必要」だと、四分一さんは訴える。「絶滅危惧種の本マグロが大量に捕獲されて捨てられているという事実もある」と驚きの話をしてくれた。一部の漁港で行われている巻き網漁で大量捕獲された産卵期のマグロが売れ残り、破棄されてるのだという。
大漁捕獲されたマグロは、船上での処理(血抜きや冷凍)がきちんとなされないため、味も見た目も悪い。さらに問題なのが「産卵期の若いマグロが捕獲されてしまうこと」だという。「これから何度も卵を産んでくれるはずのマグロがごっそり捕獲されしまう。これでは漁獲量は減るばかりです」と嘆く。

制度的な問題として「漁獲量の制限」についても話してくれた。資源保護のための漁獲量制限は、あくまでも「量」の制限のため猟法を問わない。「巻き網漁」で大量に捕獲してしまうと、はえ縄や一本釣りでの捕獲量を減らさざるを得なくなる。「まっとうなマグロ漁師が生き残れない」状況にあるという。
「下処理」が大事
これまでマグロは一本釣りやはえ縄で捕獲され、船上で「すぐに」「丁寧に」処理されてきた。「日本の処理技術は、世界一なんです」。釣り上げたらすぐに〆て血抜きをする。これは「マグロが暴れて体温が上がり、身が傷んでしまう」のを防ぐ先人たちの知恵。さらに急速冷蔵することで鮮度を保持したまま港へ運ぶ
。こうした「下処理」を日本の漁師たちが世界各地で教えてきたほどだという。
漁師の方が長年培ってきた技術は「美味しく食べるだけでなく、まっとうな値段で魚を売り、海洋資源を守るための技術でもある。これを受け継がないと」と語る。
また「今はスーパーでの販売が主体で、魚屋さんとのやり取りがなくなっているのも問題だと思います。食べ方が伝わらないから決まった魚しか売れなくなってしまうのです」。結果的に一つの資源だけが枯渇していくことになる。
四分一さんは定期的に「お魚のさばき方講座」や「お魚ワケワケ(珍しい魚など実費のみで配布)」といった活動を行っている。「正しく処理された魚をきちんと調理すると美味しい。それをたくさんの人に知ってほしいし、もっとたくさん魚を食べてほしい」と語る。
家で食事をする機会が増えた今、漁業に思いを馳せながら、あらためて「魚料理」にチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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四分一耕
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