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Interview

産官学一体で盛り上げる「きゃっチャリ」事業㊦

2021.10.4

福井県坂井市役所、「丸岡城天守を国宝にする市民の会」、丸岡高校の生徒など多くの人々の手によって立ち上げられた「きゃっチャリ」事業。その背景には役所の意識の変革もあったという。
今回はそうした背景と、今後の展開について伺った。

脱縦割り、脱お役所仕事

この事業は産官学の連携だけでなく、役所では珍しい複数部署の連携もなされている。前田氏が所属していた地域振興課、企画情報課、シティセールス推進課の3部署が連携している(※)。

さらに「事業を立ち上げておしまい」にしないために「一般社団法人丸岡城天守を国宝にする市民の会」とも連携した。

市民の会は指定管理業者としてきゃっチャリ事業を運営。
同会の橋本氏は「役所の方が以前より積極的に私たちに関わろうとしてくれている。今まではこちらからアプローチしなければ動かないことが多かったが、今は逆になってきた。行政と市民のキャッチボールが上手くできている。」と語る。

前田氏も「今は本当にうまく回っていると思う。役所にあったいろいろな壁がなくなってきている」と語る。

※「きゃっチャリ」立ち上げ時の部署名。
 2021年4月の機構改革により現在は下記に変更。
 ・丸岡支所地域振興課 → 生活環境部丸岡支所
 ・企画情報課 → 企画政策課
 ・シティセールス推進課 → 観光交流課
地域を巻き込んだ活動へ

役所の職員の意識の変化は「連携協定」でもたらされたのではないかと前田氏は語る。
リコージャパンとの連携協定など様々な連携協定を通じて「こんなことができるの?それならこれは?」と職員が考えるようになったという。

さらに「市民のみなさんがボランティアでがんばっているのを見ると、自分たちももっとやらなければという考えに変わってきている。」と続けた。

橋本氏は様々な人を巻き込むことの大切さをこう語った。「天守閣の国宝化もそうですが、私たちのような会の人間だけがいくら騒いでも意味がない。地域や役所の多くの人が賛同してくれる状況、『機運醸成』が必要です。今はまだ私たちの活動は深く知られていませんが『彼らはがんばっているね』と思ってくれたり、『ちょっと手伝おうか』といってくれる人がでてきたり、そういうことの積み重ねをしていく。もっと地域を巻き込んだ活動にしていかなければと思っています」。

「丸岡地域でうまくまわるようになったら、次は『県内のお城ネットワーク』づくりなどもしていきたい」と橋本氏は夢を語る。

止まらず動き続ける

コロナ禍で「きゃっチャリ」の利用率は思うように伸びていない。アプリ告知用のパンフレットはそこそこ持ち帰られているが、アプリ本体のダウンロード数も思うほど伸びていない。

パンフレットは甲冑を身につけたサムライが自転車に乗る独特のデザイン

「今はまだ難しいかもしれないが、とにかく動き続けることだと思っています。」と前田氏。
「きゃっチャリに乗ってくれた人がどれだけ満足してくれたのか、満足してもらうためには何を良くしていけばよいかのヒアリングもしていきます。来てくれた人が宣伝マンになってくれるように。」と語る。

一方、橋本氏は現場で、現物での告知を積極的に行っていくつもりだ。「10/17にお天守前公園(きゃっチャリ拠点の目の前)で骨董市のようなものを企画しています。そこに来てくださった方々に、自転車を見てもらいたいと思っています。『こんなのあるんだ』と思ってもらうことからはじめます。とにかくいろいろなところで、自転車を露出していきます」。

役所内での連携、市民の会や高校生との連携。多くの方の思いをのせた自転車は走り出したばかり。
福井県坂井市をコロナ明けの旅行先のひとつに加えてみてはいかがだろうか。

INFO

坂井市公式サイト:丸岡の魅力を巡る レンタサイクル事業「きゃっチャリ」Web
一般社団法人丸岡城天守を国宝にする市民の会Web