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Interview

障害者の働きかた - 就労移行支援事業所の役割 -

2021.11.22

就労移行支援事業所という施設がある。全国で3,503(2018年厚労省調べ)あるこの施設は障害のある方々の就職支援と定着支援を行っている。
就労移行支援事業所が行っていることや障害者の就業の現状について、NPO法人ダイバーシティコミュニケーションズが運営する「就労移行支援事業所ビンゴ横浜」の代表理事浅山路恵さんと小林一清さんにお話を伺った。

コミュニケーションで解決

「就労移行支援事業所」とは、障害のある方の一般企業への就職をサポートする福祉サービス。通いながら一般企業で働くための職業訓練を受け、就職活動のサポートや就職後は長く勤められるようサポートもしてくれる。

この施設を利用することができるのは原則として「一般企業で働くことを希望する障害を持つ18歳以上満65歳未満の離職中の方」。利用期間は最長2年間で、ほとんどの利用者が無料で利用している(世帯収入によって自己負担あり)。

職業訓練のプログラムは事業所ごとに違い、それぞれが得意分野を生かしたカリキュラムを提供している。ビンゴ横浜では「コミュニケーション」に特化したプログラムで支援している。

「健常者も障害者も就労の際のポイントは「もめないこと」だと思う。ちょっとした言い違いから関係が悪化していき、離職につながることもあります。それを防ぐためのコミュニケーション力をつけるプログラムを提供しています。」と浅山さん。
元客室乗務員や教育業界経験者など、様々なバックグラウンドを持つ講師が指導にあたっている。

障害者雇用の現状

就労支援事業所に通う利用者は「一般企業」への就職を目指している。受け入れる側の企業も、近年大きな変革を求められている。

ご存知のように企業は「法定雇用率以上の割合で障害者を雇用すること」が義務付けられている。法定雇用率に達していない事業者には納付金が課される。2021年3月には法定雇用率が2.2%から2.3%に引き上げられた。そのため、今は障害者雇用には積極的な企業が多いという。

とはいえテレワークの浸透もあり、障害者に頼む仕事の切り出しがしにくくなっている。障害者雇用率制度の対象は従業員43.5人以上と中小企業も含まれる。体力のある大企業は多少の余剰人員のカバーができるが、中小ではそうはいかない。納付金を払うことで障害者の雇用を諦めている企業もある。

大手企業の中には「特例子会社」を作るところもある。法定雇用率はグループ企業全体で計算することができるため、一社でまとめて雇い単純作業などをしてもらう。

人材派遣会社が管理する農園と契約する企業もある。企業は農園をレーン単位で借り受け、運営費用と人件費を支払う。人材派遣会社は障害者を組織して農園全体を運営する。育てた野菜類は社員食堂で提供されたり、社員が家庭に持ち帰ったりと、障害者にとってもやりがいのある仕事になる。

生きるための知恵を

こうした企業側の努力もあり「障害者が働ける場所は増えています」。さらに「民間企業への就職のハードルも低くなっています。私も憧れる超有名な外資系企業に就職でき、そこの名刺を手にした人もいます。」と浅山さん。「うちの子は無理、と諦めている親御さんにも希望を持ってほしい」と続けた。

就労環境が変わってきている今、就労移行支援事業所も変わっていく必要があると言う。
ビンゴ横浜でも「PC操作など技術的なこともお教えしていますが、それよりもコミュニケーションが大事だと思っています」。PCが使えなくても「挨拶ができる」「時間通りに来る」「わからないことはわからないと言える」ことのほうが重要だという。

また、リモートワークが浸透したことで、外出先での作業の仕方をお教えする機会も増えているというが「あえてポケットWi-Fiは配布しない」のだという。ポケットWi-Fiを渡してしまうと、それがない時にどうしていいかわからなくなる。限定的な知識より「マクドナルドに行けばWi-Fiが使える」というような「生きるための知恵」を教えていく。

まだまだ知られていない存在

就労移行支援事業所がそれぞれの特徴を生かして活動しているのに、その存在はまだまだ知られていない。障害者に関わる医者やカウンセラーですら、その存在及び役割を知らないことが多いという。

現状のままでは、支援が必要な人のところに情報が届かない。ビンゴでは少しでも多くの利用者の方に存在を知ってもらうために「SNSの活用」や、「クリニックなどにお伺いして施設を紹介」するなど様々な活動をしている。

障害者を受け入れる側として気をつけることを聞くと「いったん受け入れてほしい。その上で共感ポイントを見つけてほしい。ぜひ声をかけてほしい」。

障害者と健常者が気兼ねなく働ける職場が一つでも増えることを祈りたい。

INFO

NPO法人ダイバーシティコミュニケーションズ Web
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