
人と人をつなぐ「深夜食堂」
福井駅前にある小さな飲み屋「パブリックハウスおいち 深夜食堂」。名前の通り深夜2:00ごろまで営業しており、日々さまざまなバックボーンを持つ客が訪れ、新たなつながりやしかけが生まれている不思議な飲み屋だ。
ビジネス人脈紹介無料
「深夜食堂」のメニューにはこんな記載がある。

「深夜食堂」のマスターである西澤さんに「自分がやりたいこと」「できること」を伝えておくと、「こんな人がいるので会ってみませんか」と紹介される。一度会うだけである程度「その人を読む」ことができてしまうマスターの紹介は、外れがなく筆者もよいご縁をいくつももらっている。
例えば、福井出張中に地元埼玉の女性社長を紹介してもらい意気投合。地元役場も巻き込んだ実証実験ができた。また、福井市や坂井市のキーマンを紹介してもらうことで新たな取り組みができたり・・・。

レンタルスペースが原点
西澤さんはもともと広告業界にいた。最初は写植をやっていたがデジタル化の流れで営業職に。その縁もあり商店街の方々と仲良くなっていった。会社を辞めてうろうろしていたところ、商店街内の映画館の支配人に「2階が空いている。ここで何かやれ」と言われてはじめたのがレンタルスペース事業だった。
「デザインフェスタという素人でも参加できる展示イベントをヒントにしました」と西澤さん。デザインフェスタでは大きな会場を一般人でも借りられるよう小さく区切って低価格で貸し出しており、駆け出しの作家やアマチュアに人気だという。
こうしてできた「レンタルスペース スペースおいち」はギャラリー、勉強会、女子会、占い会、クラフトマーケットなど様々なイベントに使われた。「いろいろなお客様がいらっしゃって、勝手にそこここで話が盛り上がって。そうやって人脈がつながっていく。人脈紹介を意識するようになったのはそのころから」と西澤さん。
さらに、利用者が増えるにつれ月1回定例飲み会を開催するように。当時のビルは洋品店が集まる雑居ビルで設備的に宴会には不向きだったため「飲める場所を作りたい」と「深夜食堂」の構想が膨らんでいく。
チャレンジする人を応援する
2階建ての空き物件を紹介してもらい「深夜食堂」を開業。2階部分は「スペースおいち」としてデッサン会や撮影会、楽器練習などに使われている。
レンタルスペースが発想の原点のため、店舗経営も一風変わっている。18時以降は西澤さんが運営する「深夜食堂」だが、朝はおむすびやさん、昼はコロンビア料理のお店になることも。「自分が使っていないときは店舗も誰かに使ってもらおう」という発想なのだという。だからこそ店名には「パブリックハウス」の文字がついている。
「深夜食堂」には駆け出しの芸術家などもたびたび訪れる。取材時には書道家の山内改行さんが訪れ、テーブルひとつだけの「お店」を開いた。
「この場所を使ってもらって、大きく広げてほしい」というのが西澤さんの願いだ。

福井を訪れた際に立ち寄ってほしい一店だ。