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Interview

館林のオリーブ栽培㊤ 耕作放棄地を救う

2022.5.9

年々増え続ける耕作放棄地。この問題をオリーブ栽培で解決しようとチャレンジしている会社があります。代表の三田さんにお話を伺いました。

文具屋から農業ベンチャーに

三田さんは館林市にある老舗文具店「三田三昭堂」の三代目。近年のネット通販の台頭で「文具専門店は絶滅危惧種」だと笑う。文具を売るだけではダメだと、オリジナルの文具の開発・販売も行っている。中でも「香り付きの万年筆用インク」はテレビ番組でも取り上げられ大人気に。海外にもディストリビューターを配置、輸出もしている。絶滅寸前の文具屋の年商を5倍にまで押し上げたアイデアマンだ。

常に新しいことにチャレンジし続ける三田さん。50歳を過ぎてからもその勢いは衰えなかった。人脈を広げようと起業家の育成や新規事業の創出を目的とする勉強会「群馬イノベーションスクール(GIS)」に参加したのだ。ここでの刺激がもとになり、以前から興味を持っていた農業分野に飛び込むことに。老舗文房具店と農業ベンチャーの二足のわらじを履くことになった。

2017年に株式会社ジャングルデリバリーを設立、「グリーンのレンタル事業」を開始した。館林駅前に「夏はヤシの木、冬はモミの木」をレンタルした。見た目はよく、市民にも喜ばれた。しかし、季節ごとに入れ替える必要があり、想像以上に手間と経費がかかりすぎて撤収(現在は常緑樹であるオリーブの木を駅前に設置している)。

「もっと貢献度の高い事業を行いたい」と耕作放棄地問題に取り組むことにした。

館林でシークワーサー? オリーブ?

耕作放棄地は跡継ぎがいないなどで放置された農地。年々増え続け2026年には46万ha、東京ドーム98,000個分になるという。農家の数も急減している。耕作放棄地は野生動物のすみかになってしまうことも多く、近隣への悪影響もでてしまう。

館林はキュウリやナス、稲作が盛ん。耕作放棄地でそれらを作っても大きなメリットはでにくい。そもそも稲作は装置産業とも言えるほど、トラクターなどへの初期投資が大きく儲けを出しにくい。さらに米の消費量は年々下がり続けている。「では何を作ればよいのか」。

約11年前、地元の有志が立ち上げた研究会が市内にシークワーサーを植えていた。意外にも館林で順調に成長し、たわわに実をつけていた。館林周辺は、年の平均気温が15℃と高く、日照時間も2000時間以上と長いため果樹栽培に適していたのだ。この気象条件から三田さんが見つけ出したのがオリーブだった。

そのまま口に入れられるものを

シークワーサー畑は3年ほど前にジャングルデリバリーが引き継いで管理している。畑には「雑草」が生い茂り、虫が飛び回っている。「太陽の力だけで、何にもしなくてもシークワーサーができます」と三田さん。1本の木から20キロほどのシークワーサーが収穫できるという。

実は「雑草」に見える草も重要な存在。マメ科の植物は「根粒菌」と共生しており、地中に窒素を供給してくれる。作物の成長に欠かせない栄養分が自然と取り込まれている。シークワーサー畑の土はフカフカで歩いていて気持ちが良い。豊かで生きている土壌の証拠だ。

また柑橘類であるシークワーサーの天敵は蝶。「毎年、蝶が卵を産み付けていきますが、農薬を使わずじっと我慢です。観察していると鳥に食べられるなど、蛹になり蝶になれるのはほんの一部だとわかります。ちゃんとバランスが取れています」。農薬を使えば、果実にも影響がある。「そのまま口に入れられるものを作る」ことが三田さんの想いだ。

シークワーサー栽培の体験ももとに、オリーブ栽培に乗り出した三田さん。2018年に1haの耕作放棄地を引き取り「オリーブの森」を作った。

オリーブの圃場

ここで草刈りを担当しているのは5頭のヤギ。フンはそのままオリーブの肥料となる。
ここでも無農薬・無施肥を実施している。

草刈り隊のヤギ

次回は三田さんの「持続可能な農業への取り組み」をご紹介します。

COMPANY INFO

株式会社ジャングルデリバリー Web