
幻のエビ「ブドウエビ」
ブドウエビをご存知だろうか。水揚げ量の少なさから「幻のエビ」とも呼ばれるエビだ。
食べたことのある方から「エビの中で一番美味しい!」と聞き手に入れてみた。
幻の理由
ブドウエビはその名の通り巨峰のような紫色をしている。といっても紫色をしているのは死んだ後、かつ新鮮なうちだけ。生きているときは赤いため、標準和名はヒゴロモエビ(緋衣海老)と名付けられている。ブドウエビは流通上の呼び名だ。
サイズは15センチ前後まで育つ。千葉県から北海道にかけて広い範囲で生息している。そのため各地で水揚げ可能だと言われているが、実際は北海道の羅臼町がほぼ唯一の漁獲港となっている。しかも、羅臼でもブドウエビ漁を行っている船はたったの1隻!1日10数キロしか水揚げされないため希少価値が高い。
羅臼では「エビ籠」を使った漁を行っている。「籠」の中にエビの餌を入れて海に投入し、餌に引き寄せられてかごに入ったエビを引き揚げる漁だ。水揚げされたエビは生きたまま氷の入った水槽に入れられ、港まで運ばれる。港でもすぐさま氷入りの発泡スチロールの箱に入れられるため、鮮度が高いまま市場に出される。
旬は羅臼での漁が許されている7月~9月だ。
年齢で性転換?
今回手に入れたブドウエビは抱卵していた。緑色のきれいな卵で、ブドウエビという名前の由来は卵かと勘違いしてしまったほど。

実はブドウエビ、年齢で性別が変わるのだという。1歳でオスとして成熟し4歳まではオスのまま。5~7歳でメスになる。同じタラバエビ科に属するボタンエビやアマエビも同様に年齢でオスメスが変わる。
年齢で性別が変わるのは、大きく成長した体のほうが卵を多く抱えられるからではないかと言われているが詳細は不明。抱卵期間が1年11ヶ月から2年ととても長いという特徴もある。同じ科のボタンエビは約1年、アマエビは約10ヶ月だということからもその長さがわかる。
お刺身がおすすめ
ブドウエビのおすすめの食べ方は何と言ってもお刺身。ねっとりとした舌触りに濃厚な甘み。ボタンエビに似ているが、ボタンエビより濃厚な気がした。
卵は粒が大きく、ぷちぷちとした食感。臭みもなく、濃厚というよりさっぱりした味わい。ネット上では「塩漬けされていないキャビアの味」と書いている方もいる。
頭とカラからはとても良い出汁がとれる。ていねいに煮出せば黄金色の出汁になり、雑炊などでいただける。
希少価値が高いブドウエビは、当然お値段も高い。15センチ前後で小売価格が1匹3,000円を越えることも。なかなか手が出せない金額だが、一度は食べていただきたい味だ。
HIGHLIGHT
漁獲量の少なさから「幻のエビ」と呼ばれているブドウエビ。年齢で性別が変わる変わった生態を持つ。濃厚な味わいでおすすめしたいエビ。