Close

About

東京のコンテンツ制作会社が運営する
時事コラムサイト
株式会社オフィス・サウス

Prev Next
Image
Interview

リサイクルが変わる? - ハンディー樹脂センサー

2022.8.1

プラスチックゴミの分類を日常的に行っている人も多いと思います。積極的にリサイクルに取り組む自治体がある一方で、今でも「燃えるゴミ」として処理をしているところも。また、事業系のプラスチックゴミや海洋などから回収されるゴミなど、分別が難しくやむなく焼却や埋め立て処理されているものも多くあります。
今回はこうした現状に一石を投じることのできる機器「リコー樹脂判別ハンディーセンサー」のご紹介です。

リサイクルされないプラスチックがある!?

樹脂とはもともとは「松脂や漆のように樹木の樹液が固まった物質」のこと。樹液は採取量が少なく高価なため、石油や石炭などの化石資源を原料とした「人工の樹脂」が開発され広く使われるようになってきた。プラスチックはこの「合成樹脂」の一種で、広く一般に知られている素材のひとつ。近年、プラスチックごみの海洋汚染などマイナス面が取り沙汰されることも多いが、加工のしやすさ、丈夫さ、リサイクルのしやすさなどから使い途は多い。

日々のゴミ出しでも「リサイクルのため」に「プラごみ」を分別している方も多いと思うが、実はプラスチック全体のリサイクル率は低いのだという。

「廃プラは年間約800万t排出されていますが、リサイクルされず単純焼却・埋め立てされているものが113万tもあります」とリコーの田山さん。「その原因のひとつが、プラスチックを正確に分別できないこと」なのだという。
「例えば輸入部品のトレーのように樹脂の表示や刻印がないために分類できず、廃棄されているものもあります」。

手のひらサイズで判別

リコーのハンディー樹脂センサーは、こうした問題に対応できないかと開発されたもの。環境省が実施する「(令和元年度/2年度)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金『脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業』」を利用している。

このセンサーは、手軽に樹脂の種類を判別できる機器。手のひらサイズで操作もごく簡単、2秒ほどで判定結果がわかる。

判別したいものに装置をあててスイッチを押す
判定結果はスマホで確認

判別できる樹脂の種類はデフォルト設定で7種類。PP(ポリプロピレン)やPC(ポリカーボネート)などの主要な素材があらかじめ登録されている。これ以外に100種類までの素材が追加登録可能だ。合成樹脂の種類は「無限」と言われるほど多いという。あとから簡単に種類を追加できることは、機械を長く使ってもらうためには欠かせない機能だ。

近赤外線を使って分析

樹脂判別センサーは実は他社でも開発されている。コンパクト性や測定スピードはトップクラスだ。リコーが複合機などで培ってきた光学技術が生きているのだそう。

分析には近赤外線を使っている。樹脂ごとに吸収する波長が違うことから、反射光を受光して判別する。この方式だとどうしても「高価」で「大きい」機械になってしまうが、MEMSミラーを用いて検出器を単素子化したことで、「安価」で「小さく」することに成功した。

反射光を使った判別を行っているため、すべての光を吸収してしまう「黒い樹脂」の判別ができないというデメリットもある。今回は「小型化」を優先して「黒い樹脂の判別」は今後の課題とした。

同じ理由で「透明」の素材もそのままでは判別ができない。透明素材の場合は、裏側に小型のリフレクション版を当てれば測定できる。ただ、センサーと素材とリフレクション版を手にしての判定は少しやりにくい。「まだまだ改良の余地があるリフレクション版です」。

教育分野での活用も

ハンディーセンサーは「廃プラ処理の中間業者の方々に使っていただけるのでは」と考え、ヒアリングなどを進めている。現在こうした事業者は「熟練の職人」が「燃やしたときの燃え方、煙、炎の色などで判定」しているという。「属人的ですし、燃やしてはいけない素材まで燃やすことになり、健康への影響が懸念されます。こうした方々が安心して使える機械として、普及させていきたい」と語る。

持ち歩けるサイズであることも強いという。営業マンが「客先でさっと判別しその場で商談を進めることができる」ことが大きなメリットになるという。

また、海洋プラスチックごみの回収の際などにも活用できるのではないかと、実証実験を行う準備を進めている。

その他、教育現場での活用もあるのではと期待している。中学3年生の理科の授業ではプラスチックの判別を学ぶという。ここでも「燃やしたときの燃え方、煙、炎の色など」ことを教えている。「安全に学べる環境」を提供できるのではないかと考えている。

プラスチックの素材を海外に頼っている日本にとって、「しっかり判別、リサイクル」できることの意義は大きい。今後に期待だ。

INFO

リコーハンディー樹脂センサー Web