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Interview

日本遺産のお酒③「伊丹諸白」を受け継ぐ富士山蔵㊦

2022.11.21

「伊丹諸白」を受け継ぐ酒蔵のひとつが「富士山蔵(小西酒造)」見学。いよいよ仕込みに入ります。

仕込む

いよいよ仕込みの工程。
原料となる酒母、麹、水、蒸米を3回に分けて仕込んでいく、日本酒独自の方法だ。一度に仕込んでしまうと酒母の中の酵母が薄まってしまい、増殖が追いつかなくなる。それを回避するために編み出された方法なのだそうだ。
一番目の仕込みを「初添(はつぞえ)」二番目を「仲添(なかぞえ)」三番目を「留添(とめぞえ)」と呼ぶ。「添える」という言い方が日本らしい。

仕込みタンク。蓋をあけると日本酒独特の香りが。

温度と発酵状態を見ることがここでのポイント。酵母が活動すればするほどタンク内の温度が上昇する。温度が上がりすぎないよう、タンクには冷却装置がついている。

冷却装置がなかった江戸時代では木樽の周りに雪を積み上げたり、水の代わりに氷を入れたりすることで温度管理をしていた。「寒仕込み(冬にお酒を仕込む)」が一般的だった理由のひとつだ。

この工程でできあがるのが「もろみ」。もろみの出来具合は現代ではアルコール度数などを分析するが、機械のない時代は杜氏が表面の泡の具合をみて判断していたという。

絞る

酒造りも最後の工程「上槽(搾り)」に入る。槽(ふね)と呼ばれる大きな圧搾機で、もろみを清酒と酒粕にわけていく。

現代では槽だけではなく巨大な圧搾機も使っている

絞られた清酒は冷却タンクにそのまま貯蔵されるものと、火入れ(加熱殺菌)されるものに分かれる。火入れをしないと熟成が進みやすく、お酒の品質が変わってしまう。冷蔵技術が未熟だったころは、火入れをすることでお酒の品質を保ち長距離輸送もできるようにした。現在では、冷蔵技術や輸送方法が発達したため「生酒」と呼ばれる火入れをしないお酒を作ることができている。

この後、清酒はおり引き、濾過の工程を経て貯蔵される。

検定を受ける

下の写真のタンクは「検定桶」と呼ばれているもの。

検定桶にはそれぞれの容量が1リットル単位で記載されている

現代ならではの施設で、ここで酒量が厳密に測られている。酒税に関わる計量で、原料から算出される酒量と実際の酒量を比較管理している。

工場見学はここまで。このあとお酒は瓶詰めされ出荷されていくという。

工場見学を通じで道具はかなり進化していると感じたが、お酒造りの基本工程は江戸時代から大きくは変わっていない。酒造りに携わる人の経験や勘に頼るところも大きい。
効率化の波に飲み込まれず、長く伝わってほしい。

INFO

小西酒造株式会社
〒〒664-0845 兵庫県伊丹市東有岡2丁目13番地
TEL 072-775-0524
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