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Interview

本場のパエリアを日本に

2022.11.28

パエリアはスペイン料理。お米や魚介類を使うことから日本人の口にも馴染みやすく、人気のメニューです。実は日本で広く知られているパエリアは、本場のものとは大きく違うのだとか。今回は、本格スペイン料理 EL TRAGON(エルトラゴン)の栗原さんに本場のパエリアについて教えていただきました。

パエリアは農家メシ?

パエリアの発祥の地とされているのは、スペイン東部にあるバレンシア地方。オレンジで有名な地域だが、実は稲作も盛んでお米を使った料理も豊富だ。

パエリアと聞くと、エビやムール貝、色とりどりの野菜がきれいに飾られているものと思うだろうが、本家バレンシアのパエリアはかなりシンプル。「パエリア バレンシアーナ」と呼ばれ、タイトル写真のようなどちらかというと地味な見た目だ。

パエリアはバレンシア地方の「農家メシ」が起源だったと言われている。農作業の合間に、水田の周りで手に入る素材を使って炊き上げる。そのため具材も、日本でのイメージと違ってお肉が中心となる。パエリア バレンシアーナの基本的な具材は「鶏肉、ウサギ肉、モロッコインゲン、ガラフォン豆、トマト」だと栗原さん。

出来上がったパエリアは、お皿などにはとりわけず、パエリア鍋から直接スプーンですくって食べるのが基本スタイル。さっと作ってさっと食べ、後片付けにも時間をかけないための工夫だ。

オレンジの薪で炊く

パエリアを炊くのは、バレンシアのもう一つの名産品であるオレンジの薪。薪から出る煙が、パエリアの風味を増すのだという。



薪で炊き上げるパエリア-エルトラゴンで。ここでは長野県産杉の間伐材を使用している。

バレンシアでは、パエリアは屋外で調理されることも多い。薪の準備や火起こしなどの力仕事も多いためか、バレンシアの一般家庭では、日曜日のお昼に外でパエリアを炊くお父さんの姿も見られるという。家族や友人とともに楽しく囲むのがパエリアなのだ。

ちなみに現地ではパエリアは昼間に食べるもので、夜には食べないそう。これも農家メシの名残だろうか。

パエリア審査基準に「おこげ」?

パエリア バレンシアーナのもうひとつの特徴が「おこげ」を重要視すること。鍋底に均一におこげが広がっていること、カリッとしたおこげであることが良しとされる。

1960年にスタートした国際パエリアコンクールの審査基準も「味・見た目・おこげ・色・食感」だ。このコンクールでは公正な審査のため、薪・パエリア鍋・食材は全て主催者が用意。審査員はどの調理人が作ったパエリアかわからない状態で審査する。多めに支給される材料をどの配分で使うか、薪をどう使うかで競われるのだという。

日本に本場のパエリアを

今回お話を伺った栗原さんは、このコンクールの第53回(2013年9月開催)で入賞した実力者。入賞をきっかけに「日本パエリア協会」を立ち上げパエリアを広げる活動を行っている。自身がオーナーシェフを務めるエルトラゴンでは、薪で炊き上げる本場さながらのパエリアを提供している。

厳密に言うと魚介を使ったパエリアはパエリアとは呼ばれないというが、栗原さんは「堅苦しく考えず、現地はそんなものなのなんだ」と受け取ってもらえればと語る。「いろいろなパエリアがあっていいし、それが楽しい」。

イベントに出展。巨大なイカスミパエリアを提供した。

エルトラゴンのパエリアは、筆者のパエリア感を根底から覆す美味しさだった。よろしければぜひ。

SHOP INFO

本格スペイン料理 EL TRAGON
東京都港区西新橋2-13-8 広瀬ビル1F
TEL 03-6268-8636