
改装に失敗したお肉屋さんの話
お店にお客さんを呼ぶことができない非常事態宣言のなか、いっそのこと改装をしてしまおう!というお店もあるようです。今回は、お店の内装と色のちょっと面白い話をご紹介しましょう。
色彩学の世界ではちょっと有名な、お肉屋さんの失敗の話。
ある肉屋さん。もっとお客さんに来ていただき、多くの売上を上げられるように、古くなったお店を明るくリニューアルしました。
壁は人を安心させる柔らかいクリーム色に統一。お店全体はその目的の通り、見事に温かみのある明るい感じに変身しました。しかし、なぜか、その日を境に、お客さんは以前より多く来るものの、売上の方はガタッと下がってしまったというのです。
実はこれ、色の世界の「補色」というものが原因です。
補色とは正反対の色のことです。この補色の一つの特徴は、補色の残像を目に残すこと。つまりある色を見ていると、目の中に反対の色の残像が残る、そんな現象です。

みなさん、お肉屋の店頭で美味しい肉といったらどんな色をイメージしますか。
もちろんそれは、鮮やかな赤い色をした、いかにも新鮮そうな肉、ですよね。
ところがこの肉屋さんは、店内を明るくしたいと考えるあまり、店内を全て「クリーム色」にしてしまった。
クリーム色の補色は「青紫」。つまり明るいクリーム色の壁の色を目にしていたお客さんが、いよいよ商品の肉に目を移したとき、そこには「青紫」の残像が残り、折角の新鮮な赤い色をした肉が、全て腐ったような色に見えていたのです。これでは、いくら良い商品を並べても売れません。
ただ、こうした知識を少し知っていると、逆に補色を使った効果的な演出も可能となります。例えばサラダ。
緑のレタスに、赤いトマトを配置してみる。ただコレだけで、そのサラダが緑一色のときに比べて、グッと立体感溢れ、美味しそうな存在になるのはご存知の通り。とくに色の知識が無くとも実行されている方も多いでしょう。これは補色同士を並べると、お互いを引き立てあう効果を利用したものです。
肉やお刺身などに、必ず緑の葉などが添えられているのも、とても効果的です。
お肉屋さんのショーケースでも緑のパセリなどが配置されて、赤(この場合は赤いほど新鮮)が際立つように演出されます。
Highlight
補色とは正反対の色のことです。
この補色の一つの特徴は、補色の残像を目に残すこと。
「捕色」を知ってより効果的な演出を。